あれは15年前のこと。結婚式の準備でバタバタしていた最中に、夫が結婚指輪をなくしました。仕事柄、金属類を外さなければならない時があり、そんな状況の中での出来事でした。「またなくしそうだし、指輪、もうなしでいいか！」という夫に「結婚式で使うでしょ」と説得して、もう一度アイプリモへ。

店員さんに事情を話すと「刻印と内側のお石は、同じでよろしいですか？」と聞かれました。すると夫は「それ頼んだら時間もかかるだろうし、もうめんどくさいし、いっか？」と。まぁ、そういうことを言い出すだろうな…と思っていた私は、半分あきらめかけていました。

すると、正面に座っていた店員さんが「えっ！！！ちょ…」と驚いた顔で声をあげたのです。その店員さんの表情を見て「そうか、ここは、怒っていいところだ」と気づきました。「お客さまだけど…お客さまにですけど…」と、言葉を選びながら、あくまで説得のニュアンスで、夫に私の思いを代弁してくれたのです。同じ女性として親身になってくれたことが、本当に嬉しかった。おかげさまで、結婚式では無事指輪交換ができました。

あれから15年。今となっては夫婦揃って太ってしまい、指輪はもう簡単には外せなくなって、今も揃って薬指にあります。

(千葉県　A.Sさん)